横山展望台、最果てリゾート賢島、エスペランサ号

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鳥羽・志摩の旅、「鳥羽の廃墟、答志島のマルハチ」の続き。

二日目、鳥羽には何もないので志摩方面に行く。ちなみに前回のエントリでも書いた戸田屋さんは朝食も美味しかった。
この辺には志摩スペイン村やらのテーマパークもあるので、普通の観光旅行とか子供連れの方はそっちに行ったら良いと思う。正直、あまりの寂れっぷりに、寂れたところの方が好きなわたしですら、「もうスペイン村とか行って普通に遊ぼうか」という気持ちに傾きかけたけれど、気合で渋いところを狙った。

まずは近鉄の鈍行で南下して志摩横山駅で下車。
ここから西の方に向かうと横山展望台というのがあるらしく、距離的に駅からも歩けそうなので、そこに行くことにした。
わたしたちは、とりあえず鳥さえいれば元が取れるリーズナブルな人たちなので、何もないなら何もないで良し。鳥も珍鳥を狙う気はない。シジュウカラでもいい。

近鉄鈍行はワンマン運転で、志摩横山も無人駅。運転手さんが料金を受け取っていて、バスのノリ。

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駅の周りには何もない。看板が渋い。

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よく分からないけれど美しい建物があった。何だろう。昭和初期くらいの建築に見えるけれど。

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ビジネス横山が傾いている。

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猫がメンチを切っている。

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志摩横山駅から横山方面に向かう道。綺麗な道で歩道もあって歩きやすい。歩行者はわたしたち以外に全くいない
でもそれが気分が良いし、傾斜も緩やかで大変歩きやすかった。

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ホオジロ。ヒッヒッと言っているのでいつもヒタキかと思うけどよく考えると全然違う。

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ジョウビタキのメス。

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ジョウビタキのメス。可愛い。

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道路を横断している足あとがある。イノシシか鹿だと思う。イノシシかなぁ。
最近山賊ダイアリーを愛読していて「猟師カッコイイ!」と思っているのだけれど、やっぱ分からん。

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2km弱ほど歩くと、横山ビジターセンターに到着。入口には海女さんの像があるけれど、なんか変な生き物風。

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アイドリングスットプ。

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横山ビジターセンターには地元の風物に関する展示があるのだけれど、この虫の標本なんか気合いが入っていて面白かった。凄いなぁ。

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「森のエビフライ」。まつぼっくりをリスが食べた跡なのだという。面白い!

で、ここから横山展望台に向かっていくのだけれど、展望台そのものは車でも行ける。直線なら500mくらいの距離。
でもそれでは面白くないので、ビオトープの辺りを回ってハイキングコース的なルートで登ることにした。
しかしどこで道を間違えたのか、遥かに大回りするルートに入ってしまい、30分以上よく分からない誰もいない山道をひたすら登り続けることになった。
やっと辿り着いた時には汗だくで、しかも他の人は車で来ている。
あの日あそこで一番頑張ったのはわたしたちだと思う。ほとんど人はいなかったけれど、自慢したくて仕方なかった。
というか、横山ビジターセンターの時点で、徒歩で来るのはわたしたちくらいのものだと思う。

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苦労しただけあって、眺めは素晴らしい! リアス式海岸!

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メジロ。

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カワラヒワ。

さて、横山展望台をやっと攻略し、横山ビジターセンターまで戻った。
そこからまた志摩横山まで戻っても良かったのだけれど、どうせなので一駅先(南)の鵜方という駅まで歩くことにした。
志摩横山から鵜方へは、国道沿いに歩けば普通に行けるのだけれど、これまたどうせなので裏の旧道沿いを歩くことにする。横山ビジターセンターで見た地図では、このルートが何とか自然歩道みたいなルートとして描かれていたのだ。
ところが、一応、横山ビジターセンターにいた係の人に歩けるコースかどうか尋ねてみると「国道沿いに行った方がいいですよ」と言う。
「地元の人は車生活で、なんでもない裏道なんか歩くのはバカバカしいと思うんだろうな」と気にしないで出発してみたら、理由が分かった。
この裏道、歩道のない狭い道で時々車も通るので、二人並んで歩くと怖い感じだ。なぜこんな道が何とか自然歩道に選ばれているのか分からない。国道沿いの歩道を歩いた方が安全だと思う。
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鵜方へのルート沿いにあったオチャッピー小物。

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なんか傾いてる。

無事鵜方駅に到着。
観光地ではなく、完全に地元ワールドだけれど、それなりの規模の町だった。
ここでまた近鉄に乗って、いよいよ終点の賢島へ。
賢島は元々無人島だったのを、近鉄が観光開発した場所だ。
高度成長期に電鉄会社が作ったリゾートの一つだと思う。沿線沿いを宅地開発、端っこを観光化、みたいな戦略だ。小田急における箱根的ポジションだと思う。いや、箱根はもっと歴史的だから違うかな。違うかも。
まぁとにかく、志摩という場所そのものが、京阪神から見ると、東京における熱海的な場所だ。
高度成長期までは新婚旅行で行く場所、90年代とかも大学生がサークルの合宿で行くような場所だった。
つまり、今となっては寂れ果てている場所の代表だ。

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しかし賢島の寂れっぷりは予想以上だった。ここに比べたら熱海なんか大都会だ。

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とりあえず昭和的な真珠屋しかない。それもやってるんだかやってないんだかよく分からない感じだ。
凄いのが、駅周辺にふらっと入れる飲食店がほとんどないことだ。
少なくとも、夕方5時を過ぎたら土産物店も飲食店も一つもやっていない。

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駅前に壊れた煙草の自動販売機があったのだけれど、煙草の値段が270円だった。
おそらく、ここの人たちは真珠養殖が本業で、販売やら観光業やらは仕事の合間に片手間でやってる感じなのだろう。そうでも考えないと意味が分からない。
もういっそ、この辺丸ごとサバゲーフィールドにでもした方が儲かりそうだ。

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ここの目玉は遊覧船のエスペランサ号
すごく昭和チックな発想だけれど、船そのものはそれほど古い感じがしない。帰ってから調べたら平成7年就航だった。

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日本の寂れた港町にパチもんの帆船が浮いているシュールな風景。もちろん、帆は見た目だけだ。そしてなんか変なオッサンが乗ってる。
乗客はわたしたちを入れて8人くらい。スタッフの数の方が多いんじゃないか。前の回に乗っていたお客さんとすれ違ったけれど、アジア系外国人が目についた。

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ホンマこのオッサンは何なんや。三重県とスペインにどういう繋がりがあるのか知らない、というか繋がりが何かあってもどの道シュールすぎる。
船上では「左手に見えて参りましたのは・・」みたいな案内アナウンスが流れているのだけれど、ある所まで来ると「志摩に伝わる民謡」が紹介されて流れてくる。
英虞湾を走るパチもんのスペイン帆船、そこで流れるエンヤートットな民謡。これ以上シュールな状況があるだろうか

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しかしいざ出航してみると、予想より遥かに楽しかった
なんというか、普通に走っているだけで楽しい。前日に乗った連絡船とは全然違う。客も少なくて子供もいないから、寒いけれど甲板の上から景色を堪能できる。
英虞湾は穏やかな海で、それで真珠養殖が発展したそうだけれど、確かにとても穏やかで、湾の入口近くに行った時だけ風が強くなっていて、納得した。

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リアス式海岸の風景は美しいし、寒くてもずっと甲板にいたくなる。50分1500円だけれど、全然値打ちある

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イカダの上で海釣りをしている人がいる。
時間になると船が迎えに来てくれるのだろうけれど、この物凄い寒い場所で何を考えているのだろう。取り残されたら軽く死ねる場所だ。
kiwi氏が「本当に釣り人はどこにでもいるんだよ!」と力説していたけれど、その通りだと思った。釣り人の釣りにかける執念は異常だ。

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船は途中で、真珠の核入れ?をやっているという現場に立ち寄る。
そこの小屋の中でおばちゃんが作業を説明してくれるのだけれど、勿論リアル作業ではなくて演出で、メインは真珠販売だ。
第三世界の観光地なんかだと、タクシーの運ちゃんがボッタクリ土産物屋とグルになっていて、訳もわからず連れて行かれることがあるけれど、まぁ大枠の仕組みとしては一緒のことだ。
でもここの販売のお父さんたちは、お客さんが帰ったら速攻テレビの前に戻っていそうな雰囲気で、テンションは非常に低い。全く売れる気配はないので、引退後のお父さんが駐車場の番をしているくらいの感じなのだろう。
ちなみにここに猫がいて可愛かった。

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ぐるっと回って帰ってきたエスペランサ号。皮肉じゃなく、本当に楽しかった。

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港周辺の看板。

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そしてソフトクリーム300まんえんのセンス。
このソフトクリームを売っていた店が、港の辺りで唯一やっている店だった。
なんか荒っぽいローカル向けっぽい雰囲気があって(この辺のおばちゃんは全般に口調がワイルドでちょっと怖い)、「ここはちょっとなぁ」と思って周りをグルッと回っていたら、その間のこの店も閉店していて、結局開いている店がゼロになっていた。

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駅前の土産物店。
こちら側が壊滅状態なので「駅の向こうのメインの方に行こう」とぐるっと回ったら、この壊滅状態の方がメインだった。裏はタクシー乗り場しかない。
すぐそばに志摩マリンランドという水族館があるのだけれど、わたしたちが着いたのは夕方の閉業間際で入れなかった。食堂も既に閉まっていた。そばにはテニスコートなどのあるリゾートがあるらしいので、そこはそれなりに人がいるのだろうか。そうも思えないのだけれど・・。
とはいえ、エスペランサ号は本当に楽しかったし、風景は美しいし、最果て昭和スポットを堪能できて大変充実した。
デートで訪れてこの危機を共に乗り越えることができれば、二人の絆がこの上なく強まること請け合いだ。
カップルらしいカップルはわたしたち以外にゼロだったけれど。

(このエントリの写真はkiwi氏撮影)